空き家の譲渡所得税3000万円の特別控除についてinfo
独居していた親が亡くなった場合など空き家を相続した後に、その空き家を売却する場合は、売却したときにかかる税金に対して控除が適用されます。
ただし、控除の適用には複数の要件を満たしていることが必要です。この記事では、空き家の譲渡所得税控除について、わかりやすく解説します。
<特別控除を利用するための要件>
空き家の譲渡所得税に関する特別控除を利用するためには、申請の時期や売却する家などについて、複数の要件があります。まず、特別控除を利用するための要件について、わかりやすく解説します。
-特別控除を利用できる期間-
空き家の売却に関する特別控除を利用するためには、2023年12月31日までに売却を完了(=所有権移転登記を完了)することが必要です。売却が完了したら、翌年の2月中旬から3月中旬までの間に確定申告をすることで、特別控除が適用されます。
-家に関する要件-
特別控除を受けるためには、空き家が以下の要件を満たしている必要があります。
・1981年5月31日以前に建築された建物であること
・区分所有登記がされていないこと(=集合住宅ではないこと)
・相続する以前には被相続人(=親など)以外の人が住んでいなかったこと
・相続によって取得した不動産であること
・相続した後に居住・賃貸・事務所などの用途で使用していないこと
・建物が現在の耐震基準に適合しているか、取り壊して土地のみを相続すること
従来は、相続の直前まで被相続人(=親など)が居住していることが住んでいることが条件でした。しかし、2019年以降は、被相続人(=親など)が要介護・要支援認定を受けて老人ホームに入所していた場合なども特別控除の対象となっています。また、耐震基準の適合については証明書などの提出が必要です。
なお、同じ敷地内で建物が母屋と離れとで分かれている場合は注意を要します。特別控除を受けられるのは、母屋の売却額だけです。土地については、母屋と離れの面積に応じて按分した上で、母屋の分だけが控除対象となります。
-売却に関する要件-
売却に関しても要件が定められています。売却価格が1億円以下であることと、相続の発生を知ってから3年後の12月31日までに売却完了することです。
<特別控除適用までの手順について>
特別控除の適用を受けるためには、まず不動産の売買契約を済ませた後に、市区町村役場で被相続人居住用家屋等確認書の発行を申請します。市区町村役場から書類を受け取ったら、再度税務署で申請手続きが必要です。
-被相続人居住用家屋等確認書の申請について-
税務署には被相続人居住用家屋等確認書という書類の提出が必要です。この書類は空き家となっている不動産が所在する市区町村に申請して取得します。申請にあたっては以下の書類が必要です。
・市区町村役場に提出する申請書
・被相続人(=親など)の除籍住民票
・相続人(=子など)の住民票
・売買契約書の写し
・電気水道などの利用停止証明書
・建物を取り壊した場合は取り壊し前後の写真
-税務署に提出する書類-
市区町村役場から被相続人居住用家屋等確認書を受け取ったら、以下の書類を添付して税務署に提出します。
・被相続人居住用家屋等確認書
・売却金額の内訳表(土地建物別に売却額がわかる書類)
・相続登記が完了した後に取得した不動産の登記事項証明書
・耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
・不動産売却時の売買契約書
書類での証明を要するのは、以下の事項についてです。
・控除対象となる不動産の売却額
・不動産を売却した人が相続によって不動産を取得したこと
・売却した不動産が1981年5月31日以前に建設されたこと
・区分所有登記がされていないこと
・不動産が現耐震基準に適合していること
・不動産の売却額が1億円以下であること
なお、被相続人(=親など)が老人ホームなど介護施設に入所していた場合は、以下の書類も必要になります。
・介護保険の被保険者証
・介護施設の入所契約書
・介護施設が保有する外出等の記録
これらは、介護保険の適用対象であったことと、介護施設に入所していたこととを証明するための書類です。
<特別控除申請時の注意点>
相続した不動産を売却したときの譲渡所得税控除については、2種類の方法があります。この記事で解説している特別控除と、もう1つは相続税の取得費加算です。
特別控除と取得費加算については、どちらか一方だけを利用できます。取得費加算の特例とは、譲渡所得税の計算をするときに、課税対象額から相続税額を差し引きできる特例のことです。なお、譲渡所得税は以下の計算式で計算します。
(不動産の売却額 ― 売却諸経費 ― 不動産の購入額)× 税率
特別控除を利用すると、上記数式のうちカッコ内の金額について3,000万円まで控除されます。その一方、取得費加算の特例を利用する場合は、カッコ内の金額から相続税額を差し引いて計算します。
特別控除の要件に合致する場合は、少なくなるのはどちらなのか、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。